ビジネスの細道

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本当は5億回収できない半沢直樹:半沢直樹は背任罪

半沢直樹面白いですね。以前「出向と転籍の違い:半沢直樹への突込み」という記事を投稿したところ検索経由でも多くの方に訪問いただいており注目度がうかがえました。

 

今回も堺雅人がかっこよく演じている半沢直樹について、ふと思ったことを綴ってみたいと思います(法律的観点からの突っ込みネタ投稿です)。

 

半沢直樹と竹下(赤井英和)が、東田(宇梶剛士)から5億円を回収し、「正義はたまには勝つ」と発言していました。
しかし、半沢直樹は、浅野支店長(石丸幹二)の不正を見逃し、その代わりに出世と本店への栄転を勝ち取ったわけで、正義ではなく背任罪にあたるのではないか、本当は5億円を回収できていないのではないかという疑問です。 

半沢直樹には背任罪が成立し得る

背任罪の刑法条文は以下のようになっています。 

(背任) 第二百四十七条  他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

①他人のための事務処理者が、

②利益を得る又は損害を加える目的で、

③任務違背行為をし、

④損害を加えた場合

には背任罪が成立します。

 

半沢直樹は、東京中央銀行大阪西支店融資課長であり銀行のための事務処理者にあたります。
また、出世のために浅野支店長を利用したわけで利益を得る目的があるのは明らかです。
そして、浅野支店長の不正を告発し浅野支店長が横領した金額の返還を受ければ銀行は5億円の一部を回収できたのにできなかったので銀行に財産上の損害を与えたといえそうです。

任務違背行為があったといえるかですが、融資課長という立場上融資に関わる不正を発見した場合には適切な経路で報告・対応することが必要です。大手金融機関であればコンプライアンスの一環で社内規程でもそのような、発見した場合の報告等が規定化・マニュアル化されているはずです。それにも関わらず半沢直樹は自らの出世のために浅野支店長を利用し、不正を是正する対応をとりませんでした。したがって任務違背行為があるといえます。

これらのことからすると半沢直樹には背任罪が成立し、正義とは言えないように感じます。

5億円は回収できていない

ドラマでは5億円を回収したと言っていますが、東田の隠し口座通帳を私的に差し押さえただけです。会社財産と個人財産は別物ですから銀行が担保や保証を取っていない限り手出しはできないはずです(無担保で融資していたと思います)。
考えてみてください。名義人でない銀行が、差し押さえた口座から現金を引き出そうとしても権限はないので引き落とせなくて当然です(本人以外が引き出せたら大問題です)。

また、仮に会社財産と個人財産を同視したとしても、西大阪スチールは倒産しており担保を取っていない状況化では他の債権者に先立って回収をできません。他に西大阪スチールから回収できていない債権者が大勢いることから他の債権者と平等に回収することになります。当然債権額(5億円)全額を回収することはできないでしょう。
したがって、ドラマ中では半沢直樹は隠し口座通帳を差し押さえて5億円回収した気になっていますが後に5億円回収できないことに気付くことになります。