ビジネスの細道

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出向と転籍の違い:半沢直樹への突込み

半沢直樹面白すぎます。視聴率も好調のようです。
見ていない方は再放送等の機会にぜひ見てください。
今回は半沢直樹を見て感じたことがネタですが、ドラマを見ていない方でも読んで面白い内容だと思います。

毎回、半沢直樹をみていて気になっているのは、ドラマ中で使用される「出向」という言葉です。
銀行の慣習ということはあるのかもしれませんが、出向と転籍について誤解がある部分もあるのかなあと感じます。

 

■出向と転籍の法的意義
まず、出向と転籍について法的にどのような意義を有しているか整理します。

出向は、雇用主との労働契約を維持したまま、出向先の指揮命令に従うことになります。
つまり、ドラマを例にすると、銀行との労働契約上の地位を維持しながら、出向先で働くことになります。
出向元に基本的な労働契約上の地位が残ることになり、銀行マンとしての地位は残ることになります。

転籍は、雇用主との労働契約を終了させ、転籍先と新たな労働契約を成立させるものです。
ドラマを例にすると、銀行との労働契約を終了し、転籍先と新たに労働契約を成立させることになります。
こちらでは出向の場合と異なり銀行マンとしての地位を失うことになります。

 

■銀行員ではなくなる
ドラマでは、「銀行員ではなくなる」という台詞が使われています。
出向であれば、本人の(個別的な)同意がなくとも配置転換の一種として命じることは可能です。ただ、出向の場合は既にご紹介した通り銀行員としての労働契約上の地位を失うことになりません。

転籍の場合には、銀行員としての地位を失うということになりセリフとの整合はとれます。
しかし、転籍では、銀行との労働契約を終了させる(解雇等と等しい)ことになることから、従業員の個別的同意なく一方的に命じることはできません。

 

■一般視聴者に誤解を与えかねない懸念
ドラマでは片道切符という意味で出向という言葉を使っています。
しかし、既にみたとおり法的に片道切符というのは転籍ですから個別的な同意が必要になってきます。
結局のところ、ドラマでは「出向」を命じられると出世コースから外れるし数年で給与テーブルも事実上下がるという業界慣習を表現しているものと考えられます(実際そうです)。

これはこれで表現としては間違っていないと思うのですが、個人的に懸念するのは「出向」がネガティブな言葉として捉えられてしまうことですね。
企業勤めしているとグループ会社の状況や現場を知るという趣旨で出向になることはありますがネガティブな意味をもっていないケースも多くあります。
公務員でも出向というのは若手でも命じられることはありますがネガティブな意味を持っていない出向も多くあります。

多様な出向があるにも関わらず、視聴者が出向全般をネガティブなものとして誤解されるといやだなあと感じています。