ビジネスの細道

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美容師:面貸しがもたらす労働慣行

前回統計数値で読む美容業界を掲載しましたが、多くのアクセスをいただくことができました。

美容師・美容業界の実態を統計数値から読む
美容業界について情報発信しているブログは少ないのだなあと実感しました。
今回も美容師美容室・サロン業界の裏話ネタです。
美容業界の職場環境は一般メディアにはあまり出ないので、目新しいと感じていただけるかと思います。

 

以前、美容室で働いている方は、実態としては労働者だが業務委託の形式で行われているということを書きました。
地場の情報は美容師に集まる!
これによって美容師さんの給与・報酬が抑えられ低待遇になっている面もあるのは事実ですが、美容師さんの利益にもなる慣習が背景になっているものと考えられます。
背景にあるのは、美容師業界にある「面貸し/面借り」という慣習です。

 

■面貸し/面借りとは
美容室・サロンが、店舗をもたない美容師さんに対して美容室の一角(鏡面やシャワー等の設備)を提供し、美容師さんは設備を借りた対価として売上金の一部を美容室・サロンへ支払うシステムです。
店舗を持たないフリーの美容師が、面借りによって自分の顧客をつないで稼いでいくことになります。
売上金(稼ぎ)の一部は、面貸ししている美容室へ支払う必要があり、歩合で美容師が働くような構造になります。
条件は様々ですが、美容師が売上金の40%~60%を美容室・サロンへ支払うのが相場です。

 

■美容院のメリット/デメリット
美容院側としては、設備の空きを有効活用できるというメリットがあります。
単に設備を空けているよりも、稼動させることで売上があがります。

また、面貸しすることで、面借りした美容師さんの顧客からの売上が期待できます。
美容室の既存顧客以外の顧客を美容師が持っている場合には、新しい顧客を美容室へつれてきてくれます。
美容室は新しい顧客から歩合で売上を受け取ることができるため美容室には大きなメリットとなります。

美容室側のデメリットはあまりありません。
既存美容室の顧客を美容師さんへ持っていかれるということはあるかもしれませんが、もともと面借りしている美容師さんは店舗をもっていないため大きな顧客流出リスクは大きくないのが実情です。

 

■美容師側のメリット/デメリット
美容師側は、新規出店の資金がなく店舗をもてない場合でも、自分についた顧客から売上を得られることがメリットになります。
店舗や設備による固定費を負担することなしに、働いたら働いた分だけ稼げるという点がメリットです。

デメリットとしては、美容室へ面借りの手数料(売上の40%~60%)をおさめるということでしょうか。
長く働けば働くほど、固定費を自分で負担した方が手取り額は大きくなる傾向にあります。
面借りを長く続けることは得策でなく、独立までのステップと捉えるべきでしょう。

 

■面借り/面貸しがもたらす労働環境
実態もフリーで店舗から独立した美容師であれば、歩合でも問題ないと思います。

ただ、実態としては店舗に従属した労働者というべき美容師も歩合で働いているケースもあります。
これは、面貸し/面借りというシステムがあることから、時給・月給を支払うというよりも歩合を支払うという考え方が常態化していることが背景にあると考えられます。
ちらしの配布や掃除等直接売上をあげない活動もしなければならないが報酬はないということもあるようです。
労働者として扱われず個人事業主として業務委託をしているという形式になると、本来的に美容室側が負担するはずの社会保険等も無視されてしまいます。

 

実態に沿って、法を遵守した美容室経営が必要です。