ビジネスの細道

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マンション駆込み購入者の盲点:消費税

 マンションの駆け込み需要が伸びているというニュースを見かけました。需要が伸びるのは歓迎なのですが、購入者が誤解している点/見落としている点があるように感じます。最近感じている点について書いてみます。

マンション発売、反動減を警戒 増税控え9月77%増  :日本経済新聞

 来春の消費増税をにらんだマンションの駆け込み需要が9月にピークを迎えた。不動産経済研究所(東京・新宿)が16日に発表した同月の首都圏の新築マンション発売戸数は前年同月比で77%増となり、震災の特殊要因を除くと約20年ぶりの高い伸びとなった。10月以降は反動が出る可能性もあり、不動産各社は需要つなぎ留めに商品戦略の見直しを進めている。
 9月の発売戸数は5968戸。前年同月比で5カ月連続で前年同月実績を上回った。伸び率は東日本大震災の反動増が出た2012年4月(81%)を除くと、1994年9月の86%以来の高さ。契約率も好不調の分かれ目となる70%を上回り83%だった。近畿圏の発売戸数も高水準で、前年同月比85%増と大幅に伸びた。

消費税率上昇分だけ値上がりするという誤解:土地分の非課税取引

 ダイヤモンドオンラインの「現役・三井不動産グループ社員が書いた!やっぱり「ダメマンション」を買ってはいけない」第一回記事でも「理屈では消費税が上がるとマンションの税込み価格は消費税が上がった分値上がりすることになります。」というような記述がありました。
 誤解の例として引用させていただきました。記事を批判する意図ではありません、この記事は示唆も多く良い記事だと思います。
 マンション価格の理論値が消費税率上昇分だけ値上がりするというのは誤りです。

 

 土地の譲渡は消費税の課税対象とならない非課税取引です。マンション価格には、建物部分の価格の他に土地部分の価格が含まれており土地部分については消費税がかかりません。そのため、4000万円のマンションが消費税率5%の際に200万円の消費税が8%だと320万円に10%だと400万円になるというのは誤りです。
 マンション価格の3割程度は土地価格から構成されています。この部分について消費税はかかりません。

マーケットアプローチによるプライシング

 価格決定のアプローチにはコストを積み上げて行うコストアプローチと需要側の動向を読んで価格を決定するマーケットアプローチがあります。
 マンションの場合、地域や想定購買層の需要を読み価格帯を計算したうえで開発計画をたてるのが通常です。予算を組んでその中で企業努力をして良い物件を完成させます。そのため、理論値のように消費税増税と同時にマンション価格がスライドするわけではありません。

2014年4月から住宅ローン減税拡充とすまい給付金制度開始

 住宅ローン減税制度は、住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。毎年末の住宅ローン残高の1%が10年間に渡り所得税の額から控除されます(限度額あり)。また、所得税からは控除しきれない場合には、住民税からも一部控除されます。
 この住宅ローン減税制度は、平成26年4月からの消費税率の引上げにあわせて最大控除額200万円(20万円×10年)から400万円(40万円×10年)等のように拡充されます。

 

 加えて平成26年4月からすまい給付金制度が開始します。すまい給付金制度は、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するための制度です。住宅ローン減税は、支払っている所得税等から控除する仕組みであるため、そもそも収入が低く所得のない人にはあまり恩恵がありません。すまい給付金制度は、住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果を得ることができない人の負担軽減を図る制度となっています(そのため、収入によって給付額が変わります)。

 

 これらの制度のため消費税率アップ前後で経済的効果はあまり変わらないというのが実情ではないでしょうか。